10月25日、「ミライの起業家育成プログラム」の一環として、先輩起業家の話を聞く会を開催しました。社会人、大学生、高校生など13名が参加しました。
今回お招きしたのは「KURATA PEPPER Co., Ltd.」の倉田浩伸さん。カンボジアの自社農園で胡椒を生産し、販売しておられる起業家です。
かつてカンボジアの胡椒は「世界一」とうたわれていましたが、長い紛争で絶滅寸前だったところ、たった3本の苗から再生を試み、今や国を代表する産業になるまでに復活させた「0(ゼロ)から1(イチ)」を生み出した方です。
中学の頃に見たカンボジア内戦の映画、お兄さんの交通事故死、偶然トランジットで立ち寄って目にした香港のスラム街。アメリカ語学研修中に勃発した湾岸戦争を受け、日本人だからと罵られたこと。倉田さんのいろいろな人生経験から、「世界平和」という自分の軸を見つけた倉田さん。大学在学中にカンボジアのNGOの活動に参加。しかし、倉田さんを待ち受ける現実は甘くはありませんでした。使えないから、と転職を余儀なくされたり、現地の人々の中に入り込めなかったりと、リアルな苦労話もお話しいただきました。
その時、現地の人々とのコミュニケーションの大切さを身をもって学び、自分ができることから始めようと現地の小学校を作るNGOに就職。しかし所得がなければ子どもを学校に行かせられないという現実に気づき、親の所得を増やすためにカンボジアの農業再生を志します。
そんな時、偶然、カンボジアが胡椒の名産地だったことを示す貴重な資料に出会います。書かれていた地域に足を運ぶと、残っていた天然胡椒の木はわずか3本。伝統的農法で復活させようと奮闘しますが、まだまだ事業は軌道に乗らず、当時、借金返済のためカンボジア国内のあちこちで様々な仕事を経験されました。
胡椒の販売ルートの拡大には、この時の出会いやネットワークが活きたと倉田さんは語ります。そこから自分だけのマーケットを確立することができた、回り道が自分を助けてくれたと。
また、大きな転機となったのが秋篠宮ご夫妻のカンボジア訪問でした。お土産に胡椒を買いたいとの申し出を機に、「胡椒を、カンボジアを代表するお土産にすればいい」と倉田さんは気がつきます。ここからパッケージ開発したり、一粒ずつ手作業で選別して価値を高めたりしながら、自社農園での栽培を進め、今ではおいしくて香りの良い自慢の胡椒を様々な国に販売しています。
倉田さんがカンボジアで学んだことは、価値観や命の多様性だと言います。カンボジアであっても日本であっても、その人たちの生き方や考え方を尊重し、ローカルをグローバルにつなげる「グローカル」が大事だと語ってくださいました。
起業を目指す学生には、与えられたことをすべてポジティブに捉え、楽しくやる方法を見つけた瞬間に幸せが見つかる、そして、やりたいことがあれば口に出すことが大事だとメッセージをくださいました。言うことで助けてくれる人が出てくるし、いい運も悪い運も踏むけど、必ず何かは踏めるのだから。
また、「答えのない問題に直面した時、どんな解決法を選ぶかは、何を信じてやってきたかが大事になります。それで失敗しても、気づいてやり直せば何とかなる。失敗も訓練の一つでありステップです。経験を積むと、誰を頼ればいいか、どう動いたらいいかわかってきます」と語ってくださいました。
失敗を含め、様々なステップを経てきた倉田さん。その軸には「カンボジアに貢献したい、世界に平和をもたらしたい」という思いが常にありました。そんな倉田さんの言葉に、学生たちは力強く背中を押されたことでしょう。
倉田さん、貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。