農業・水産高校向け経営・マーケティングプログラムの流れ
【商品企画】
アイデアの出し方、マーケティングの考え方を学び、グループで新商品のアイデアを出す。販売ターゲット層を明確にし、たくさんのアイデアの中からターゲットに合う商品を絞り込んだ後、その商品が本当に製造できるのかという観点でさらにアイデアを絞り込みます。絞り込んだアイデアのセールスポイントを考え、具体的な企画に落とし込みます。
アイデアの出し方を学び、思いつくままどんどん新商品のアイデアを出していきます。この時点で商品の実現の是非は問いません。
【事業計画】
たくさん出たアイデアから実現可能性、ターゲット顧客層、競合する商品の有無などを考慮し、商品を2つに絞ります。その2つに関して、セールスポイントを考え商品企画書に落とし込みます。その後、商品の原価計算の方法を学び、その仕組みを理解したうえで付加価値の付け方についても考えます。価格を決定する際には、ターゲットとなる顧客層へのヒアリングなどを通して「この商品をいくらなら購入するか」というアンケートを実施、集計し、利益を最大化できる価格を設定。それらをすべて踏まえて事業計画を立案します。2つの商品の事業収支を比較し、最終的に商品を1つに決定します。
原価計算、アンケートの集計はみんなで協力して
【資料作成・計画発表】
人に伝えるための分かりやすい資料の作り方、パワーポイントの使い方を学び、事業計画発表の資料を作成します。計画発表会では、株主や銀行などの出資者への発表を想定して行い、社長が中心となり、出資者にとって重要なポイントを押さえた発表を簡潔に行いました。この日は、食品メーカーの方にも出資者役として来ていただき、各チームの商品に対し、プロの視点からのするどい質問やアドバイスをしていただきました。
計画発表で自分たちの商品について分かりやすく発表。見やすく伝わる資料作りも勉強します。
出資者役から厳しい質問や意見も飛び交います。相手をいかに納得させる回答ができるか、短い質疑応答時間の中で頭をフル回転させます。
【試作】
夏休みの間に試作にとりかかります。計画発表会でいただいた意見や、試作過程での失敗をもとに商品を再考したり、より収益性をあげるための工夫を考えます。試作にかかった費用はすべて帳簿に記載し財務部長が管理。この時点で計画発表時に発表した商品から方向を転換するグループも出てきます。
自分たちの考えた商品に近づけるため、皆で協力して試作を何度も重ねます。その都度、友達や先生に試食してもらい感想やアドバイスを聞き、次の試作に活かします。なかなか思うような味や見た目にならないグループも。
【販売】
商品の効果的な宣伝方法、プレスリリースの作成方法やメディア取材への対応方法、店舗での商品配置を学ぶとともに、、外部企業の専門家を講師に迎え、お客様の心に響くPOP作りやパッケージデザインについて学びます。その後、校内販売所で実際に一般のお客様に販売します。
POP作りの授業。見やすくキャッチーなPOPをプロから学びます。
パッケージデザインの授業。お客様の手に取ってもらえるデザインを考えます。
販売会当日、売れるかどうか不安な生徒達。お客様に試食を提供したり、商品の説明を行うなど、積極的に販売する姿が印象的です。
授業で取材対応についても学んだので、メディア取材にもしっかり対応できました。
準備した商品は30分で完売。販売会後の記念撮影では、安堵と充実感でみんないい表情をしています。
【決算】
販売会での売上を集計、試作に要した材料費や労務費なども計上し、リアルなビジネスを想定した決算を行います。決算の結果を踏まえて、なぜ赤字になったのか黒字になったかその原因を考え、事業収益をさらに上げるアイデアを発表する決算発表会を行います。
1年間のプログラムの総まとめ、決算発表会。発表の仕方や、質問に対する回答の仕方も格段に上達しています。赤字になってもこのプログラムにおいては失敗ではありません、その原因を考えることでビジネスを学びます。
今後は希望者を募り、東京でも販売会を行う予定です。決算発表で考察した赤字の原因を踏まえて改良した商品で挑みます。平成27年度は、2月20日(土)に東京・赤坂のアークヒルズで開催される「ヒルズマルシェ」に出展する予定です。
また、この他に、平成27年度においては以下の授業を行いました。
・日本貿易振興機構(JETRO)講演会「農産物の輸出について」
・菱沼農園様(福島市飯坂町)講演会「風評被害克服と6次化商品開発について」
・アクティブ・ラーニング「日本産りんごの輸出国戦略を決定せよ」
最後に、1年を通して、このプログラムを受講した生徒たちの感想です。
「商品開発と聞いて、楽しみに授業に臨みました。実際に企画してみると新商品!と思っても既に存在していたり、試作にお金がかかってしまったり、最後は赤字に、など商品一つ作るのがとても大変で、経営やマーケティングは難しいものだと分かりました。高校生の今、この授業を受けたことは貴重な体験で、今後に必ず活かせると感じました。」
「企業がどのような経緯で商品を販売するかを学ぶことができる機会はあまりないと思うので、いい経験だと思いました。」
「グループディスカッションが多い授業で、意見が言えていない人がいたら話をふって聞き出すことができました。」
「テレビや新聞を通じて、学校のPRもできて良かったです!」
~このプログラムで開発した商品~
福島明成高等学校
●ジャムンドケーキ●
学校特製のブルーベリージャムと豆乳を加えたマーブル状のパウンドケーキ(400円)。マーブルの模様とブルーベリーの風味を出すこととしっとり感を出すことに苦戦しましたが、何度も試作を重ねて満足のいく商品に仕上がりました。
●トマトクッキー●
おいしいと評判の校内産のトマトをピューレ状にしたものをたっぷり練り込んだクッキー(6枚入り110円)。トマトとクッキーという今までにない掛け合わせの商品で、味を決めるのに苦労しましたが、トマトの風味を生かした綺麗なオレンジ色のクッキーができました。
●桃福●
福島県産の桃のコンポートと白餡を、桃のエキスを練り込んだ生地で包んだ大福(130円)。福島県の桃のおいしさをPRしたいとう思いから生まれました。計画発表の段階では、パン状の生地で包む「桃まん」を目指していましたが、試作で桃から出る水分でパン生地がベタっとなってしまい、何度挑戦してもうまく作ることができず、急遽大福生地に変更。販売会ギリギリで商品が完成しました。
相馬農業高等学校
●さらさらみかん●
相馬農業高等学校オリジナルの乳酸飲料「ラクピス」の新作(1本300円)
●三色がんづき(黒糖・抹茶・オレンジ)●
相馬農業高等学校の人気商品である郷土菓子「がんづき」を抹茶味やオレンジ味、黒糖味の3種類で味わえるように(3個入り180円)