福島市中心部にある福島県立明成高等学校。経営マーケティングプログラムを導入して3年目となる今年度は3年生18名がこの授業を受講しています。
株主総会に見立てた計画発表会でゲストから出た意見を元に、もう一度自分たちの商品について考える生徒達。「おやき風団子」を企画していたPapillonチームにはハプニングが起こりました。なんと福島明成高校の製造施設には「菓子製造免許」しかなく、「惣菜製造免許」がなかったのです。つまり、おやき風団子は惣菜に当たるため、学校の製造施設で製造したものを販売することができないという事態に。ここまで数回試作を重ね、味も納得できるレベルまで到達し、商品化まであと一歩という所まで来ていたため、肩を落とすPapillon チームのメンバー。
「先生、僕たちどうすればいいんですか・・・」
社長の高橋君が路頭に迷っていました。
しかし、実社会では計画がうまくいかないことは起こりうることです。私たちは、Papillonチームがここをどのように乗り切るのか関心を持っていました。肩を落としているだけでは、前に進みません。そこで、解決策を皆で考えることにしました。そこで出た解決策は5つ。
- おやき風団子の中身を餡などに変えて、菓子に変更
- おやき風団子を外部業者に製造委託
- 福島明成高校の製造施設で新たに惣菜免許を取得
- 文化祭と同じようにイベントとしてお惣菜の特別製造許可を取得
- 全く違う菓子系の商品を新たに企画し、変更
チーム内で話し合いが始まりました。
すぐに保健所に電話でイベント用の特別許可がもらえないか確認しましたが、製造方法が確立していない新しい商品では許可は出せないとの回答で、④の選択肢がなくなりました。
③の新たに惣菜免許を取得するには、調理室の図面の準備や、保健所の調査を受けることが必要であり、時間的に販売会までに間に合うか、また、保健所から登録不可とされた時のリスクを考え、③の選択肢も消去することに。
「でも、すごくおいしくできているから、できればこの商品のまま進めたい。」
「製造委託ってどうやって進めればいいのかな。」
意見を出し合い、出した結論は「⑤全く違う菓子系の商品に変更」でした。
「やはり委託ではなく自分たちの手で作りたい。」
「ネギ味噌が具のおやき風団子だからいいのであって、中身を餡にするならば、おやき風団子にこだわる必要はない。」
というメンバーの思いから導き出された結論でした。
そうと決まったからは、すぐに商品企画です。
「おやきの皮を平べったく焼いて“せんべい”にするのはどうかな?ネギ味噌を最後に塗ったらおいしいそう。」
先生に“せんべい”は菓子製造免許で製作可能か確認します。
「免許としては問題ないけど、おせんべいは作り方が難しいよ。おせんべい生地を乾燥させる機械もないし、天日干しも難しい。揚げせんべいならできるかもしれないね。」
揚げせんべいでは自分たちの思う商品にならないと判断し、また新しいアイデアを出します。
試作の時間もあまりないことから、別の授業で製造したこともあるメロンパンをベースにしてアイデアを出し合いました。福島明成高校で栽培・製造しているものを材料に使いたいという思いは変わらず、考え出したのが福島明成高校で作っているブルーベリージャムとイチゴジャムを生地に練り込んだ「ブルーベリーメロンパン・いちごメロンパンのセット」でした。
そうと決まれば、放課後の時間を利用して、試作に取り掛かります。しかし、思ったようなメロンパンにはなりません。クッキー生地にジャムを練り込んだだけでは、色も味も風味も全く感じられなかったのです。
↑試作に取り組むPapillonのメンバー
先生に試食してもらい、アドバイスをもらいます。色と風味はジャムだけでは出すことができず、いちごパウダーを使用することに。クッキー生地にジャムを入れることで食感も変わってしまうため、サクサク感を出すために分量についても先生と相談。思うように試作が進まなかったことから、この時点で、ブルーベリーメロンパンは断念し、いちごメロンパン1本に絞ることにしました。その後も数回試作を行い、試行錯誤を繰り返しながら、試作6回目にしてようやく納得のできるいちごメロンパンが出来上がりました。
すべての班の商品が固まり、次はその商品の販売について考える授業に入ります。次のブログでは販売授業の一つであるPOP講習の授業について記載します。
【「経営マーケティングプログラム」とは?】
「経営マーケティングプログラム」は、アクセンチュア株式会社と一般社団法人Bridge for Fukushimaが県内5県立校(岩瀬農業高校/ふたば未来学園高校/相馬農業高校/会津農林高校/福島明成高校)で展開する、農業・水産高校向け人材育成プログラムです。グローバル化や高齢化が進む中、将来の地域復興や再生を担う農業高校や水産高校の生徒は、食品や農作物を生産する技術だけではなく、高い競争力や付加価値をつけられるような製品開発力や課題解決力、そして経営に関する知識の習得が求められます。本プログラムは、こうした知識と、その基盤となるマインドを持った人材の育成を目的としています。
アクセンチュア株式会社:https://www.accenture.com/jp-ja/