事務局長 永山 光明(ながやま こうめい)さん                                                       

今回は、楢葉町のまちづくり会社である「一般社団法人ならはみらい」で事務局長をされている永山 光明さんにお話を伺ってきました。
永山さんを一言で表すと・・・
~楢葉町の人、景色を大切に思い、楢葉町の未来を願う人~ です。
お話を伺っているなかで、楢葉町の景色や住民の人のことを大切に思っていること、そして楢葉町の話になると声質も明るくなり楽しそうに話されている永山さんから、町への思いが伝わってきました。

 

~プロフィール~

事務局長 永山 光明(ながやま こうめい)さん
双葉郡楢葉町出身、1955年10月生まれ大学卒業後は楢葉町役場に勤めていた。
趣味は読書と散歩

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Q.設立の経緯について教えてください

震災後に設立された復興計画委員会の話し合いの中で、楢葉町が復興に向けて新しくスタートするうえで、まちづくり会社のように行政と住民をつなぎ、地域に対して様々な取り組みができる組織が必要ではないかという意見が上がり、楢葉町復興計画の中にまちづくり会社の設立が明記されました。

Q.どんな事業をしている又はしてきたのですか?

町に対して現在の状況や町民からの意見やニーズなどをまとめ、それを生かした事業案などの政策的な助言を行っています。
また、復興に欠かせない「きずな」「安心」「活力」を取り戻すため、「新たなきずなを育み、にぎわいのあるまちづくりに向けた取組」、「不安を払しょくし、安心のあるまちづくりに向けた取組」、「活力を取り戻し、生きがいのもてるまちづくりに向けた取組」の3つの取り組みを行っています。
それぞれの取り組みに対していくつか具体例を挙げると、

1つ目の「新たなきずなを育み、にぎわいのあるまちづくりに向けた取組」では、町内で空き家や空き地の賃貸、売却を希望する所有者から提供された情報をまとめ、これから空き地や空き家を利用したいと考えている人に提供する「楢葉町生活再建空き家・空き地バンク運営事業」。
町内視察を希望する方に震災による被害状況や復興への取り組みを伝える町内ガイドや、震災の経験を語り継ぐ語り部としてこれまでの経験や今の思いを後世に語り継ぐための活動を行う「ふるさと案内人」を行っています。

2つ目の「不安を払しょくし、安心のあるまちづくりに向けた取組」では、放射線量を測定して広報誌に掲載する「飲料水供給施設水質放射線モニタリング事業」。
他には町民が住宅のリフォームなどを行うときに「ならはみらい」が窓口となり、その情報を町内・県内の事業者に紹介するとともに、相談をした町民に提供する「住宅マッチングサービス」などを行っていました。

3つ目の「活力を取り戻し、生きがいのもてるまちづくりに向けた取組」では、
藍染め体験や農作業体験など帰還した町民に向けた機会を提供することで町民同士の交流を生み、高齢者の引きこもりを防ぐことで健康につなげる「生きがいづくり事業」。東京の大学生(青山学院大学や法政大学、東洋大学、立教大学など)に町内視察や楢葉町遠隔技術開発センターでVR体験、町民とのディスカッションなどを通して町の現状を知ってもらい交流人口の拡大を図る「スタディツアー」や町外の人が利用し町の暮らし体験や滞在の拠点として利用できる「みらいハウス」など町に関わる機会を提供する「交流人口拡大事業」を行っています。

Q.目的について教えてください

町の復興に欠かせないと考える「きずな」「安心」「活力」の3つの要素を事業によって取り戻すことで楢葉町の復興や活性化につなげることです。

Q.ビジョンについて教えてください

住民に向けた事業を行っていくためには助成金や補助金などに頼りすぎないうえでまちづくり会社を持続していくことが必要です。そのためにまずは収益を得ることができる事業づくりを行うことが必要であり、得た収益を事業という形で住民に還元していきたいと考えています。

Q.永山さんの考える理想の地域像を教えてください

隣近所の人が仲良く生き生きと住み続けていける地域が理想です。

Q.この仕事の魅力ややりがいを感じるのはどんな部分ですか?

当団体には町の出身ではない職員もいます。しかし、出身など関係なく温かく出迎えてくれたり、祭りやイベントの運営のときに町民の方が笑顔で話しかけてくれたり、藍染め体験や農作業など当団体が企画したイベントに参加してくれたりするなど、町民のやさしさに触れることができることです。

Q.永山さんにとって仕事とはどのようなものですか

仕事っていうのは必ず目的や意味があり、自分の中に経験として積み上げられていくものだと思っています。私は楢葉町役場の職員として30年間働いてきましたが、今では、この30年間は震災後のための準備として積み重ねられてきたのだと考えています。
その仕事をしているときにはその後の人生にとって何の役に立つのかわからない時の方が多いのですが、どんな仕事にも意味があるものだと思います。

Q.どのような人材と一緒に働きたいですか

復興やまちづくりなどに関連する仕事は失敗することも多くあります。しかし、失敗が成功につながっていくことになるので、もし失敗をしてもしっかり反省をして、また前を向いて歩くことができる人と一緒に仕事をしたいと思っています。

Q.大学生にはどんなことを学んできてほしいですか?

私が思うのは知見を広げることですね。地域に根差したローカルな視点も大切なのですが、学生という立場を生かしてグローバルな視点を身に付けてほしいと思っています。私も学生の時に行っておけばよかったなと思っているのですが、今は昔よりも海外に行きやすくなっているので海外に留学をしてその国の文化に触れてみるというのも1つの方法だと思います。たとえ将来、役場職員になる、なりたいと考えているとしてもグローバルな視点を持ち世界に目を向け知識を得るということは大きく役に立つはずです。

 会社情報

 
法人名 一般社団法人ならはみらい
代表理事 渡邉 清
設立年月日 2013年6月30日
社員数 13人
住所 福島県双葉郡楢葉町大字北田字中満260番地
みんなの交流館ならはCanvas
ホームページ http://narahamirai.sakura.ne.jp/
電話番号 0240-23-6771
FAX 0240-23-6772
メールアドレス info@narahamirai.com

 

お話を伺って・・・

今回、取材をしている中で楢葉町の現状や課題についても伺ってきました。2015年に避難指示が解除されたものの若者があまり戻ってこないなどまだ残っている問題が多くあることを改めて知り、復興の難しさを感じました。私が永山さんから伺ったお話の中で印象に残っていることがあります。「永山さんにとって仕事とはどういったものですか。」という質問をした時です。「自分の町役場職員としての30年間は震災以降のためのものだった。」という答えは予想もしていない言葉でした。永山さんも震災のことは予期していないことだったはずです。それでも予期していなかったことのための30年間の仕事だったと言えるのは永山さんが積み重ねてきたからこそだと感じました。さらに、それだけの気持ちで町の復興の仕事に取り組まれている方たちがいると知ることが出来て本当に良かったと思いました。

改めて今回取材にご協力いただいた「ならはみらい」の永山光明事務局長とスタッフの皆様に厚く御礼申し上げます。

取材・文章(福島大学 佐藤勇樹)

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この事業は、当団体が福島県「平成30年度福島県避難者・帰還者心の復興事業」の助成金の交付を受けて行っています。