代表理事 三浦 広志 (みうら ひろし)さん              

今回は、相馬市にある「特定非営利活動法人 野馬土(のまど)」の代表理事である三浦さんにお話を伺ってきました。
三浦さんを一言で表すと、
~自分にとって楽しい生き方を考え、生き方をそのまま仕事にする人~ です。
幼いころ、人を笑顔にする落語家になりたいという夢を持っていた三浦さん。今でも人を笑顔にしたいという気持ちは変わっておらず、県内外で「野馬土」の取り組みについての講演を行うときにも聞き手を意識して話しているそうです。私がお話を伺っているときも素敵なお話をたくさんしていただきました。

 

~プロフィール~

代表理事 三浦 広志(みうら ひろし)さん
福島県南相馬市小高区出身、1959年9月生まれ。
趣味はしゃべること。

左側の男性が三浦広志さん。右側女性は同団体理事でCafé野馬土担当の酒井ほずみさん

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Q .  設立の経緯について教えてください

私達は、復興が進んでいる場所だけでなく、復興が進んでいない地域も見てもらいありのままの相双地区の現状を伝える取り組みと、原発事故による風評被害からの再生のための取り組みを行っていました。それを相双地区の外に住む人々に発信していくために「野馬土」を設立しました。

Q .  どんな事業をしているのですか?

大きく分けて「食品の安全性や健康に対する不安を最小限にとどめる取り組み」、「Café野馬土の運営」、「太陽光発電モデル事業」の3つがあります。

1つ目の「食品の安全性や健康に対する不安を最小限にとどめる取り組み」では、「20㎞圏内ツアー」と題した福島第一原発付近を含めた被災地案内や、お米や野菜などの食品の放射能測定検査を行い測定結果などの情報をホームページなどで公開しています。

2つ目の「Café野馬土の運営」では、当団体が運営している「Café野馬土」で旬の産直野菜や福島県産のお米を使用した食事やコーヒーなどを提供しています。また、食事だけでなく憩いの場やレンタルスペースとして提供し、避難者や地元住民、帰還者に新しい出会いの場づくりをし、復興への力をはぐくんでいけるサポートなどをしています。出会いの場づくりの例として、県外から来た大学生との農業体験交流や手作りリースづくり教室などを行っています。

3つ目、「太陽光発電モデル事業」では、浜通りの生産者宅の屋根、震災や原発事故によって被害を受け農地として使用できなくなってしまった土地に太陽光パネルを設置し、その収益を農業振興や地域再生に活用するとともに、太陽光パネルを設置した土地が荒廃することを防ぐ取り組みを事業の一つとして行っています。

Q .  目的について教えてください
放射線による食品の安全性に対する不安、県民の健康に対する不安を最小限にとどめると共に、震災や原発事故の影響を受けた浜通りの復興状況や課題などありのままの現状を相双地区の外へと情報発信をすることです。

Q .  ビジョンについて教えてください
田んぼなどの圃場で農産物の生産を行いながらも、今福島県内で設置が進んでいる太陽光パネルや風力発電機などによる再生可能エネルギーを活用し収入を確保することで、生産者が持続的に農業を続けられるような半分農業×半分エネルギーという半農×半エネモデルの実現が最初の目標です。

Q .  この仕事の魅力ややりがいを感じるのはどんな部分ですか?
まず、自分がこの相馬市や南相馬市という地域に対して自分が心からやりたいと感じる事業をできること自体が楽しいし、それが事業として行政や企業に認められたり、地域内外の協力者が増えたり、というように成果がどんどん見えるのも楽しいです。さらにこの事業を一緒にやってくれる企業の人や住民、生産者が自信を持ったり楽しんでいたり、ということが見えるのが一番うれしいですね。笑顔が地域全体に広がっていくってすごくいいことだと思っているので。この事業を前に進めることで幸せになる人が増えればいいなと思います。 

Q .  三浦さんの考える理想の地域像を教えてください
まず、住民一人ひとりが自分たちの住む地域に対してやりたいこと、変えたいと思っていることができて、そこに経済循環がうまれ、圃場と再生可能エネルギーが共生した景観もよい場所を自分たちで作ることで地域が魅力的になると思っています。さらにそこに移住をするなどして集まってきた人たちが周りの人といろいろ議論したりこうしたらもっと良くなるねっていう計画を立てたりしながら自分たちの住む地域をつくっていけるようになったら良いなと思います。

Q .  三浦さんにとって仕事とはどのようなものですか?
今までずっと自営業をしていたこともあり、今の取り組みは仕事というよりは生き方そのもので、「野馬土」の事務所がある相馬市や生まれ育った南相馬市という地域に対して自分がやろうと思ったことを実現することだと考えています。

Q .  どのような人材と一緒に働きたいですか
自分の考えや意見を持っていることが大切かなと思っています。一人ひとり個性や価値観は違うけれど、仕事をやる以上同じ目的や志を持って取り組みたいので自分の考えや意見を持っているということが重要になると思います。

Q .  大学生にはどんなことを学んできてほしいですか?
自分が生きていく中で何が自分の生きがいなのか。死んだときに後悔しない生き方はどんな生き方なのか。というのを考えてしっかりとベースに持ってほしいですね。明日は明日であって昨日今日の積み重ねではない。例えば津波が来れば終わってしまうかもしれない。だからこそ自分が後悔しない生き方や生きがいを見つけてほしいです。大学生活では自由な時間が多くなるから、様々な正しい情報の得方とその情報をもとに政治なども含めて判断できる力を身につけてください。

噂やSNS上には嘘の情報もたくさんあるからこそ正しい情報を見抜く力が必要になり、嘘の情報に騙されると正しい選択ができなくなってしまいます。もし自分が事業者で情報に騙されてしまえば雇用する従業員にも影響が出てしまうことになるかもしれません。自分は事業者にはならないと思っている人でも、正しい情報を自分で集め、それをもとに判断する力を身に着けることができればそれは社会に出て大きく役立ちます。身に付けるための方法として例えば、新聞の読み比べをするように心がけ1つの情報だけを受け入れないようにする。再生可能エネルギーやAIなど専門性のあるフォーラムに参加して最新の情報を知る。といったことがあります。
大学でしかできないこともたくさんありますし、それは将来経験として生きてきます。時々でもいいのでそのようなことを考えてみてください。

 

 会社情報

・法人名     特定非営利活動法人 野馬土

・代表理事    三浦 広志 / 杉 和正

・設立年月日   2012年10月9日

・従業員数    4人

・本社住所    福島県相馬市石上字南白髭320

・ホームページ  https://nomado.info/

・電話番号    0244-26-8437

・FAX      0244-26-8203

・メールアドレス info_nomado@fork.ocn.ne.jp

 

お話を伺って・・・

お話を伺って感じたのは、三浦さんは相馬市や南相馬市に対して事業として行って自分が楽しいと思うことをされているのだなということです。どのお話にしてもとても楽しそうにお話をされていました。
その中でも特に印象に残っているのは、三浦さんの仕事のとらえ方でした。大学卒業後は専業農家としてずっと農業をされていた三浦さんが震災を経験し、農業の震災や原発事故による被害からの再生や今の浜通りのありのままの現状を伝えるためにしてきた様々な取り組みは仕事ではなく自分の生き方だよね。という言葉に驚くとともに、自分の生き方だととらえているからこそどの取り組みにも一貫性があったのだなと感じました。

改めて今回取材にご協力いただいた特定非営利活動法人野馬土 代表理事三浦様に御礼申し上げます。

編集(福島大学 佐藤勇樹)

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この事業は、当団体が福島県「平成30年度福島県避難者・帰還者心の復興事業」の補助金の交付を受けて行っています。