【第1回:渡邉さや(わたなべさや)・菅野愛希(かんのあき)】

この春、県立福島高校を卒業した渡邉さやさんと菅野愛希(あき)さん。卒業までの3年 間、BFF のコミュニティスペースを利用したり、スタッフの大人たちのアドバイスを受けたりしながら、「自分のやりたいこと」を実現するために、積極的に活動してきました。お互いを「さや氏」「愛希氏」と呼び合う2人に、これまでの活動を振り返ってもらいました。

―そもそも、BFF と関わるようになったきっかけは何だったんですか。

さや:私は、小学生のころから、将来は WHO の職員になりたいという夢があって、そのために中学生の頃から勉強も頑張って高校に入学しました。高校でも、先生にその夢の話をしていたら、ある時先生から、「今度 WHO の職員の人の話を聞くイベントがあるらしいから、行ってみたら?」と声をかけてもらって。
それが BFFのイベントだったんです。そこから、スタッフの方や同じ高校生の先輩に誘われて、いろんなイベントに参加していくうちに、自分も企画の運営にかかわるようになっていきました。

―2人は同じ高校ですが、初めから仲が良かったんですか?

2人:全然!(笑)

さや:最初の印象は・・・ないです(笑)

愛希:福島高校と安積高校と、兵庫の灘高校の希望者が集まって、震災の経験を共有したり、被災地を見たりする合宿があったんです。さや氏とはそこで出会いました。
私はもともと、人前で話をするのが苦手だったんですが、そういうことが得意な子に対するあこがれは、ずっとあったんです。
だから、高校生になったら、何か新しいことをやってみたいと思っていて、合宿とかイベントとか、そういうものには積極的に参加するようにしていました。

さや:その合宿の時の愛希氏は、すごく縮こまって、自分の意見も言わないし、受け身な感じでした。

愛希:さや氏は、自分からリーダーやりますみたいな感じで、しゃべれるし、頭きれるし、すごいなって。仲良くなりたいけど、自分とは違う、雲の上の人みたいに思っていました。

さや:合宿で一応連絡先は交換して、そのあと合宿の参加者で、「福集め隊」という、自分たち福島の人が地元福島を好きになろうというコンセプトの団体を立ち上げたんです。
自転車で飯坂温泉に行ったり、人気のお店を訪ねたりしたんですけど、その活動を通して、親しくなっていったと思います。平日は勉強や部活でみんな集まれないから、土日に活動するんですけど、学校が開いてないこともあって、BFFの事務 所を使うようになりました。

愛希:BFF のイベントにも誘ってもらって、「かっこいい大人の話を聞く会」という、職業や肩書きではなくて、人としてかっこいい!と思える大人の人を呼んで話を聞く会 に参加したんですけど、そこでさや氏にシュークリームをもらったのを覚えています(笑)

―愛希さんは、人前に出るのが苦手な性格だというけど、そこからどうして積極的に活動するようになったんですか?

愛希:学校で「リベラルゼミ」という、放課後に希望者が集まって、学校では学べないことについて学ぼうというものがあったんですけど、そこで LGBT について学ぶことになって、先生に運営を任されてしまったんです。だけど、プロジェクトの立て方とか、何もわからないのにどうしよう・・・と思って、BFFの伴場さんや、さや氏に相談しました。自分自身で一から企画を運営したのは初めてでした。

―自分自身で企画を立てて、それを動かしていくという経験の中で、印象に残っていることはどんなことですか?

さや:「高校生が自分自身について考える」というのをどうしてもやりたいと思いました。
BFFに来るようになって、自分がどうしてそのプロジェクトをやりたいのかとか考えるうちに、自分の将来についても、「どうして WHO の職員になりたいと思ったんだろう?」と考えるようになりました。
そうするうちに、それは他人に見せるための夢だったんだと気付きました。優等生タイプで、褒められるのも好きだし、すごいねと言われるのも嬉しい。WHO の職員になりたいって言ったら、かっこいいじゃないですか(笑)
だから、私はその肩書きに惹かれていたんだということに気付いたんです。それで、2年生の3月に行った、「ソラトブクルマ」という、「かっこいい大人の話を聞く会」の合宿バージョンの中で、そういう時間を作ることができました。

愛希:私は、「ハイスクールピッチ」という、何かやりたいプロジェクトのある高校生が、仲間集めやアイディア集めをするイベントでのプレゼンがすごくうまくいったことです。
初めて自分で企画運営に携わったのは LGBT について学ぶゼミだったんです。
けど、実は、本当にやりたかったのは18歳選挙についてだったんです。
だけど、もう少しで3年生になるという時期で、時間もないし難しいかなと思っていました。
それで、BFF のスタッフの人たちの助けも借りながら、選挙についての基礎知識をまとめて、学びなおして、それをハイスクールピッチでプレゼンしたんです。人前で話すのが苦手だったのに、それがすごくうまくいって、見ていた大人たちにもすごく褒められて、自信がつきました。

さや:本当にすごかったんですよ、嫉妬するぐらい。
堂々としているし、内容もわかりやすいし、スライドの作り方もいいし。話も面白いし、動きもあって、完璧だと思いました。奇跡のプレゼンだった!

愛希:奇跡でした(笑)ゼミは1回限りでしたが、18歳選挙について開催することがで きました。1回だけだったけど、その講義に来てくれた人は、きっと投票にも行ったと思うので、やってよかったです。

―活動を通して、自分の夢を見つめなおしたり、苦手なことを克服したりすることができたんですね。では反対に、難しかったこと、うまくいかなかったことはありましたか。

さや:ほぼ失敗しかしてないです(笑)
「私、リーダー!」ってがつがつ進んでいってしまうクセがあって・・・
自分だけが走っていて、気付いたら誰もついてきてなかった ということが何度もあります。
まわりが見えていなかったんですね。「福集め隊」の 活動も、だんたんメンバーが減ってきて、自分の企画も前に進まない・・・
そんな時に、愛希氏が、LGBT や18歳選挙のゼミの運営をやっていて、先を越された気分でした。

愛希:私は、プレゼンがうまくいきすぎてしまって、「自分はできるんだ」と思ってしまったことです。みんなに褒められて、期待されて、「自分ってすごいんだ!」という感じになってしまって。
完璧主義になって、だんだんとうまくいかないことが蓄積されて崩壊してしまいました。
今まで頑張ってきたこと、うまくいったことも全部無駄だったと思いました。
苦手を克服したくて頑張ってきたけど、やっぱりうまくいかないんだって、すごく落ち込みました。

―どうやって、そこを乗り越えたんですか。

さや:「福集め隊」は、途中で路線を変更しました。
初めから期間を1年と決めて活動していたので、何か形に残さなきゃと焦っていたんですけど、そうじゃなくて、「福集め隊」というコミュニティを利用して、メンバーがそれぞれやってみたいことを実現する場にしようと思いました。
例えば、福島の伝統料理を作りたいとか、特産のなめこを使ったなめこパーティー!(笑)
功績を残さなくてもいいんだと思ったら、楽になりました。

愛希:どん底まで落ちると、それ以上失うものも、しがみつかなきゃいけないものなくなって、自分の本質を見つめ直すのにいい時間になりました。いい大学に行って、希望の会社に就職する、それじゃなきゃダメなんだと決めつけていましたが、「ソラトブクルマ」に参加した時、ある社長が、たくさん方向転換をして自分は今の場所にいるんだと話していました。
それを聞いて、それまでの自分の考えがぶち壊されました。こうじゃなきゃいけないなんてことはないんだと。
それに、ずっと BFF で大人の人たちを見ていて、いろんな知識や考え方が無意識のうちにストックされていたんだと思いますが、「大学なんていつでも行ける!」と思ったら、視野が広がりました。

―楽しいことも辛いことも、活動を通してたくさん経験したんですね。3年間見てきて、お互いに変わったなと思うところはありますか。 
愛希:さや氏は、いつも頭の中に自分のやりたいことの構想があって、それを完璧にやっ てのける、雲の上の人と思っていました。だけど、壁にぶつかっているところも見て、それは努力してこその姿だったんだなと思いました。それに、どんどん新しいことを取り入れて、視野が広がっていったと思います!
私は、リーダーというタイプではないけど、さや氏がロールモデルなんです。彼女の背中を見て、自分自身も成長できたと思います。
本当に、さや氏がいなかったら、私はこんな風になっていなかったです!
さや:こういうこと言ってくれるんですよ(笑)
愛希氏は、最初は本当に印象がなかったのに、突然、自分で企画を立て始めたり、2つの企画を同時に進行させたりして、 すごく嫉妬した時もありました。自分と同じ、リーダーとして見ていた部分もあります。
大学受験の面接で、どうしても愛希氏のことを話したくて、面接の前日に話をしたんです。
面接に不安もいっぱいあって、自分がやってきたことがどれだけ通用するかとかすごく焦って自信がなくなっていたんですけど、そこでこんなこと言われて、涙が出ました。面接では、「この目で変わった人を見てきたから、そういう人を増やしたいんだ」と話すことができました!
―こうした活動を通して得た経験を活かして、将来はどんなことがしたいですか。
さや:失敗があったからこそ、人のことをちゃんと見ようと思っているし、人と向き合うことを覚えておきたいと思います。私は、しゃべりたがりで人の話を聞くタイプじゃなかったけど、そこを自覚できたことで、人の話を聞くことができるようになりました。
小学校から高校まで、委員長や部長といったいろんなリーダーをたくさんやってきて、リーダーというのは先頭に立って引っ張って行くものだと思っていました。
“サーバントリーダー”という言葉があるんです。引っ張っていくのではなく、みんなの受け皿になるリーダーで、形を整えたり、手綱を持っているリーダー。サーバントというのは、奉仕者という意味なんですけど、それがすごく自分に合って いると思いました。リーダーって奥深いし、自分に合ったリーダー像を探したいと思います。
将来は、まだ揺らいでいるけど、教育関係で「場を作る」ことがしたいと思っています。
高校生が自分らしくいられる、そういう場を作ってみたいです。 だけど、それだと BFF と同じになってしまうから、何か差別化を図らなくては(笑)
愛希:私は、人前で話したり、人とコミュニケーションをとることがすごく苦手なので、 企画を立てるとか、プレゼンするとか、そんなの絶対無理!って思ってました。だけど、実際にやってみて、絶対できないなんてことはないんだと分かりました。私 と同じように、人とコミュニケーションがうまく取れなくて、社会で生きづらさを感じている人はたくさんいると思います。

だから、私はそういう人のために、勉強 して、成長しようと思うんです。将来、そういう人に出会っても、私が今のままだったら何もアドバイスしてあげられないけど、もしも成長できていたら、アドバイスもできるし、元気もあげられるかもしれない。
大学は、一度は行きたくないと思ったのですが、来年また挑戦して、自分の生きづらさを解決するために学ぼう、同じような人のために成長しようと思いました。

―最後に、後輩たちにメッセージをお願いします。

さや:一度、自分自身としっかり向き合ってほしいです。興味に惹かれるのもいいけれど、 一度立ち止まって、「なんでそれをやりたいのか?」「自分は何に心を動かされるの か?」そういうことを考えてもらいたいです。

愛希:私は、興味があったら思い切って飛び込んでみるのもいいと思います。高校生の特権で、失敗しても許されるし、いろんなことを教えてもらえる。やってダメでも、 何も得られないなんてことはないし、たくさん経験を蓄えることは、その後の人生に必要です!とりあえず BFFに来れば仲間もできるし、本気で語り合ってくれる人もいるし、何かあれば相談に来ればいいと思います!

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■ 編集後記
正反対と言ってもよいぐらい性格の違う2人は、学校の外へ出てこのような活動をしていなかったら、きっとただの同級生、顔見知り程度の関係だったのだと思います。「友達」なのか「仲間」なのか、どんな言葉で2人の関係を表したらよいのかわかりませんが、話をしていて、お互いに尊重し、尊敬し合っているのが、とてもよく伝わってきました。
それぞれのやりたいことに向かって、これからは別々の道を進み、会う機会が少なくなったとしても、お互いの存在が、2人の行動力のエネルギーの一部になるのではないかと感じました。(I.S)
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